環境ニュース
NIEHSニュース| 進歩に向けたパートナー
人類と環境の健康リサーチの世界では、つながりを保つことが最新の情報と進歩を把握し続けるカギで る。殆どの専門家がそのつながりを維持する方法のひとつは、信頼のおけるピアレビューされた研究を発表する確立された刊行物を通じて安定したつながりを保つことで る。しかし、アフリカのように資金とリソースが不足している世界では、そのつながりは細いとしか言いようがない。同記事 (p. A452)では、アフリカの研究誌の印刷効率、信頼性、範囲を高めることを目的として創設された国際パートナーシップにより進められた様子を検証している。
FOCUS | 舗装の国
米国は広大な土地を持つ。その道路は長く、幅広く、駐車場も大きく、その数も多く、郊外は他のどの国よりも遠くまで広がっていると言える。実際に、米国の舗装地域は43,000平方マイル以上に及ぶ。これらの土地からの流去水が米国の環境に大きな危険を呈している。同記事 (p. A456)では、舗装からの流去水と関連する環境問題を検証し、解決策の可能性について検討している。
SPHERES OF INFLUENCE | 下水システムを熟知する
150年前に合流型の下水システムを導入したことにより、下水の処理は大きな進歩を遂げた。今日、これらのシステムは旧式となり、現代の人口が排出する下水量の処理に対応しきれないケースが頻繁に見られる。嵐の際は雨水と処理前の下水によって下水道が溢れかえり、合流型下水道は機能不全状態となる。環境擁護者と地方自治体は、連邦政府によって資金の援助を得ることによる下水システムの改良を希望しているが、現在の連邦政府予算の状態では、下水処理システムの改良費用は地方や州からの捻出を期待する以外にはないことが分かる。同記事(p. A464)では、合流型下水システムに関連しているコストと問題の一部について検証している。
INNOVATIONS | 蚊の防虫剤
ブンブンとうるさいだけでなく、かゆみを引き起こす蚊は、世界中の多くの人々に危険な病気を広げる。研究者たちは、この大きな問題を引き起こすごく小さな昆虫を駆除するために、よりよい防虫剤を求めて研究を続けている。蚊にかまれないようにするためには、蚊の嗅覚の中和に るかも知れない。同記事 (p. A468) では、蚊の嗅覚器系に る特定の細胞を標的とする新世代の防虫剤を検証している。
論評
毒物学| 塩化ビニル:ケーススタディー
米国環境保護局(EPA)では、塩化ビニル(VC)の毒物学的影響に関する2000年最新情報の最終化作業の際、VCの発がん物質としての分類、またその効力の見積数値が問題となった。Sassら(p. 809) は、論評の中で、EPAによるVC毒性の考察が、肝臓以外のすべてのがん発生部位からのリスクを無視することにより、また、発がん性の推定値を以前の環境政策作成に使用された数値より10分の1に下げたことにより、安全対策を緩めてしまった可能性が ると指摘している。
倫理学| 殺虫剤の人体実験
殺虫剤の人体実験に関する議論で、2つの相対する考え方が浮上してきた。一方の考え方は、殺虫剤の人体実験は厳正な科学的・倫理的基準の下で容認されるべきで るとし、他方の考え方は、人体内実験は決して容認されるべきではないというもので る。ResnikとPortier (p. 813) は、2つ目の考え方のうちでも最も強力な議論(実験が利益をもたらしても、そのリスクを正当化するには及ばない)を評価し、a) 実験により得られる知識が人類の健康を増進するもので り、b) その知識が他の方法では得られないもので り、c) その実験が人体に害を与えないもので り、em>d) 適切な安全対策が施されている場合に限り、被験者の意図的な殺虫剤曝露を用いる研究は容認されるべきで ると論じている。
トキシコゲノミクス| トキシコゲノミクスと公共の利益
トキシコゲノミクスのツールの科学技術に主要な進歩が見られているにも関わらず、科学と政治の複雑性が、トキシコゲノミクスを使用することによる公共の利益の推進を遅延させる恐れを生んでいる。また、更に悪いことには、トキシコゲノミクスの第一目的をも遅延させ、広く使用されている化学物質の規制と安全を弱化させるかも知れない状況で る。Balbus (p. 818)は、技術的・政治的な阻害要因が克服できたときに始めて新しいトキシコゲノミクスの目的は実現可能だという見解に合意する多様な分野やセクターの専門化の意見を集めた。科学者と公共の利益を守る専門家は、柔軟性を欠く法規解釈や、不適切な占有 利などにより、公共の健康の保護効果が阻害されることがないように監視や努力を続行しなくてはならない。
レビュー
ナノテクノロジー| ナノトキシコロジー
空気中のナノ・サイズの微粒子(NSPs; < 100 nm)への曝露は、過去100年間、人工源によって劇的な増加を見せてきた。Oberdörsterら(p. 823) は、設計されたナノ構造とナノデバイスの安全性評価の基準とするために、空気中の超微粒子を用いたバイオキネティック研究と毒物学的研究について考察している。研究項目には、適当・適切な薬量/濃度、弱まった微生物の効果増進の見込み、可能性が期待できる利益を含んでいた。ナノトキシコロジー研究で適正なリスク評価を達成するには、多分野(例:トキシコロジー、素材化学、医学、分子生物学、バイオインフォマティックス)のチームによるアプローチが不可欠で る。
曝露の評価| 個人曝露の評価
ヒトのストレッサー曝露を評価する新しい技術や手法は、環境曝露と疾病の関係に対するわたしたちの理解を高める機会を与えてくれている。Weisら(p. 840) は、これらの技術が実際に使用され、科学界で受け入れられるようにするためのコンセプト上の枠組みを提示している。この枠組みは、曝露・疾病の関係と、疾病の発生における遺伝子要因と環境要因の相互作用を特定するための曝露評価への統合アプローチを使用して、複雑なヒト疾病の理解に焦点を当てている。
研究
呼吸器の疾病| 神経成長因子のレベルに見る変化
香りや化学物質による上下気道の症状を訴える患者は、カプサイシンを吸入すると咳感受性が増加するが、この反応の正確なメカニズムは解明されていない。Millqvistら(p. 849) は、カプサイシン吸入刺激前後の鼻洗浄液中の神経成長因子(NGF)を測定し、カプサイシンによる咳の発生度をNGFレベルと関連付けた。この研究ではこれらの気道の病態生理を健康な対象者と比較し、その結果、香りや化学物質により発生する上下気道の症状を持つ患者では、感覚の反応過多は実在して測定可能で ることが判明した。
リスクの特徴付け| 脂質の調整とリスク評価
ポリ塩化ビフェニル(PCB)等の脂肪親和性物質への曝露に関する論文は、ヒトの健康リスクと矛盾し、その解釈に疑問を投げかけている。研究所におけるPCB定量化の多様性に、矛盾する研究結果の一部の原因が るかもしれない。Schistermanら(p. 853) は、PCB曝露、血清脂肪、健康に対する影響のリスク(乳がん)の分析に使用される4つの統計モデル(調整なし、標準、調整済み、2段階)を評価している。原因から仮定される作成された統計モデルは、偏りの る結果を生んだ。脂肪の標準化(すなわち血清脂肪による血清濃度の分類)は、非常に偏りを生じやすかった。
生殖器の健康| 血清ダイオキシンと更年期年齢
ラットとサルを使った実験により、2,3,7,8-テトラクロロベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)が卵巣機能に影響を与える可能性が示唆されている。Eskenaziら(p. 858) は、1976年の薬品工場爆発時に、TCDDとイタリアのセベソ近隣に住む女性の更年期年齢の関係を調査した。これらの女性はすべて、爆発時には更年期に入っていなく、爆発の直後に採取された血清中のTCDD濃度が測定された。その結果、約100 pptまでのTCDDでは更年期早期発生のリスク増加との量に依存した非単調な関連が示唆されるが、100 pptを越えるTCDDではこの関連は見られなかった。
曝露の評価| 家庭における水の使用とトリハロメタン曝露
水道水によるヒトのトリハロメタン(THM)曝露は、摂取、吸入、または皮膚曝露を通じて起こる可能性が る。Nuckolsら(p. 863) は、2つの上水道サービス地区のそれぞれにおける一軒家での水使用実験の参加者を対象として、血液と吸入した空気中のTHM濃度を曝露のバイオマーカーとして測定した。温水使用実験では、少なくとも一人で、血液と吸気のTHM濃度が2倍に増加した。観察したうちでも血液と吸気のTHM濃度の最大増加は、シャワー、入浴、手による食器洗いという活動に見られた。これらの活動における血中THM濃度の平均増加量は、57〜358 pg/mLで った。
Science Selections, p. A474も参照
神経発達 細胞の分化を阻害するPCB
発育期にポリ塩化ビフェニル(PCB)の曝露を受けた子供は、神経心理学的な機能障害を引き起こす可能性が る。これまで、PCBが甲状腺ホルモン(TH)の伝達を阻害することにより脳の発達に影響を与える可能性が指摘されてきた。Fritscheら(p. 871) は、TH依存型の神経細胞分化にPCBが影響を与えるか否かを決定するために、初代正常ヒト神経前駆細胞(NHNP)を使用したモデルを作成した。NHNP細胞は、培養中のニューロン、星状細胞、乏突起神経膠細胞に分化する。トリヨードチロニン(T3)と同様に、mono-orthoに置換されたPCB-118(2,3´,4,4´,5-ペンタクロロビフェニル)は、乏突起神経膠細胞形成の用量依存型増加を引き起こす。コプラナPCB-126(3,3´,4,4´,5-ペンタクロロビフェニル)は全く影響を及ぼさなかった。結果から、PCB-118がTH経路を通じてT3作用を模倣することが示唆される。
Science Selections, p. A472も参照
環境医学
神経行動学的疾病| 認可済み殺虫剤散布者の神経症状
適度の殺虫剤への慢性曝露によるヒト神経毒性に関しては まり知られていない。Kamelら(p. 877) は、1993〜1997年に農業健康調査に参加した農薬散布者から取得した一生を通じた農薬の使用と神経症状の横断調査データを分析した。その結果から、曝露者自身が報告した神経症状は、最近の曝露や中毒歴に関わらず、燻煙剤、有機燐化合物系や有機塩素系殺虫剤の累積型の適度な曝露と関連していることが示唆される。
Science Selections, p. A472も参照
心血管疾病| 空気汚染とST部下降
一日の環境中微粒子の汚染量増加は、心臓血管罹病のリスク増加と関連付けられている。Goldら(p. 883) は、61〜88才の活動しているボストン市民の反復測定研究において、環境汚染とST部レベルの関連を調査した。この研究には、多様な活動中のホルター心電図の継続的モニターも含まれていた。エクササイズ後の休憩では、黒炭素(BC)のレベルの上昇が、持続モデルの12時間平均BCによる-0.1 mmのST部の下降と関連付けられた。また上昇したBCによって、ST部の下降が一回以上起きた場合の、ST部下降のリスクの増大を予測されている。
喘息| 大巡回ラテックスが誘発する職業喘息
Green-McKenzieとHudes (p. 888)は、ここ4年間で呼吸不足が強まってきた46歳の外科病理学者のケースを紹介している。発表では、この外科病理学者は呼吸困難となり、皮刺テストではラテックスに陽性の反応を示し、肺機能のテストでは、気管支拡張薬の使用によって回復できる軽度の障害を示していた。患者のテスト結果は、ラテックス誘発性の職業喘息と一致している。患者は、ラテックスの手袋に存在する促進剤に従属的なアレルギー性の接触性皮膚炎と一致している症状に気づいた。のちに患者は、ラテックスへの反応のタイプ1と一致している蕁麻疹、紅潮、そして過敏性反応呼吸器官の症状を示した。臨床医は、患者に職場で新しく喘息が始まった場合や、職場で喘息の症状が悪化した場合には、職業喘息をの可能性を考慮すべきで る。
子供の健康
神経発達| 幼児期の鉛暴露と知力機能
まだ解決されていない問題は、< 10 µg/dL という血液濃度における鉛に関連する知力障害についてで り、また、一定の曝露変化のもとでは、低い曝露量は大きな障害と関連しているか否かということで る。Lanphearら(p. 894) は、主要結果測定参考値としてのフルスケールのIQスコアを使用して、知力テストスコアと子供の体内の鉛濃度の関連を調査した。ログ線形モデルを使用して、同時にテストした6.9のIQ点の減衰が同時にテストした血中鉛レベルが2.4〜30 µg/dLへの増加と関連していることが判明した。2.4から10 µg/dL、10から20 µg/dL、20から30 µg/dLにおける血中鉛と関連している推定されたIQの減点は、それぞれ3.9、1.9、1.1で った。最高血中鉛レベルが < 7.5の鉛に関連した子供の知力減退は、最高血中鉛レベルが > 7.5の鉛に関連した子供の知力減退と比較すると有意に大きかった。
Science Selections, p. A473も参照
呼吸器の疾病| 血中鉛レベルと喘息のリスク
鉛曝露は、イムノグロブリンEの生成過多と関連している可能性が り、喘息のリスクを増加させ、人種間の相違の原因となっていることが考えられる。Josephら(p. 900) は、血中鉛レベルの喘息発症のリスクとの関連における人種間相違について検証した。血中鉛レベルが < 5 µg/dLの白人と比較すると、アフリカ系アメリカ人は血中鉛レベルに関わらず、喘息のリスクが有意に大きかった。アフリカ系アメリカ人における喘息リスクへの血中鉛レベルの影響は観察されなかった。結果により、人種、喘息表現型、遺伝子感受性、鉛を含む社会環境的曝露の複雑な相互関係をさらに詳細に追及する必要性が ることが明らかとなった。
曝露の査定曝露| バイオマーカーとしての臍帯水銀
フェロー諸島での予期研究で、水銀曝露の主要バイオマーカーとして分娩の際に採取した臍帯中血液と母親の頭髪に含まれている水銀濃度を使用した。Grandjeanら(p. 905) は、これらの曝露バイオマーカーの補足として、臍帯細胞中の水銀も分析した。細胞の乾重量との関連で表現すると、臍帯の水銀濃度は、臍帯中血液の水銀と大きな相関関係に った。従って、臍帯水銀の分析は、妊娠中のメチル水銀曝露を測定する有効な手段として使用できる。ただし、不明瞭な要素は適正に調整する必要が る。
がん| 子供の脳腫瘍とPON1殺虫剤の代謝
Searles Nielsenら(p. 909) は、新生児の検査用保存検体からのDNAを面接データとリンクした人口ベースのケースコントロール研究を使用して、2つの共通のp450/パラオクソナーゼ1(PON1)経路遺伝子多型で るC-108TとQ192Rが、幼児期の脳腫瘍(CBT)の発生と関係しているか否かを調査した。その結果は、 PON1レベルとCBT発生の間の反比例の関係と一致しており、その原因は、子供の環境に通常見られる有機燐化合物殺虫剤を解毒するPON1の能力に ると思われる。これらの結果を確認するために、血漿PON1レベルを測定し、殺虫剤曝露のより正確な評価を組み入れた大規模な研究が必要で る。